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#子どもの心と体

作成日 2019/10/31

更新日 2024/05/13

保育園のお昼寝(午睡)の時間は?何歳まで?必要性と目的について解説

お昼寝中の子供

保育園のお昼寝について、さまざまな悩みを抱えている保育士が多いのではないでしょうか。

今回は、時間設定や環境、必要性の有無、さらには寝かしつけの方法など、誰もが知りたいお昼寝の疑問点について、深く掘りさげて考えてみましょう。

目次

保育園のお昼寝(午睡)とは?

母と子 添い寝

子どもたちを長時間預かる多くの保育園では、ほとんど毎日のようにお昼寝がおこなわれています。そのため、保育士にとっては非常に馴染みが深いものですが、お昼寝の基本知識については意外と知られていません。

お昼寝の基礎的な情報についておさらいしておきましょう。

誰が決めた制度なの?

保育園で実施されるお昼寝は、そもそも誰によって決められた制度なのでしょうか。その根拠と考えられるもののひとつが、保育所保育指針です。

平成30年4月1日から適用されている現在の保育所保育指針の「3 保育の計画及び評価」という項目には、「午睡は生活のリズムを構成する重要な要素であり、安心して眠ることのできる安全な睡眠環境を確保するとともに、……」という記述が存在します。

また、厚生労働省が作成した保育所保育指針解説書のなかでも、「保育のねらい及び内容」に関する説明の箇所に、「一人一人の生活リズムに合わせて安心して適度な休息や午睡がとれるようにするとともに、……」という文言が明記されているのです。

昭和40年に作成され4回の改正を経て現在にいたるこの保育所保育指針は、保育園を運営するうえで根本となる規定です。そのため、各保育園では、この指針や解説書をもとにお昼寝をおこなっていると考えられます。

実際どれくらい「お昼寝」しているの?

保育所保育指針のなかには、お昼寝の時間をどれくらい設定するかについての具体的な記述はありません。

何時から何分間お昼寝タイムを設けるかは、各園の判断にゆだねられているため、スタート時刻も長さも保育園ごとにまちまちです。

多くの園では、昼食が終わりお腹のふくれた子どもたちが眠くなり始める12時半前後を目安に、お昼寝をスタートしています。

お昼寝終了の時刻については、遅くとも15時ごろから実施されるおやつの時間までには起こすのが一般的です。ただ、お昼寝に必要な時間は年齢によって変わりますし、保護者がお迎えにくる時刻によっても左右されます。

そのため、子どもたち一人ひとりの生活リズムをしっかりと把握し、夜の睡眠に悪影響を与えないよう配慮しながらお昼寝時間を設定することが重要です。

なぜ「お昼寝」に注目が?

お昼寝をするか否か、もしくはその時間の長さについて、保育士や保護者の間でときどき話題に上ることのひとつです。なぜお昼寝に注目がされるのでしょうか。

大きな理由として、江戸川大学社会学部人間心理学科 教授であり、睡眠研究所長の所長でもある福田一彦教授を中心に、保育園でのお昼寝が就寝時間の後退に影響しているのではないか、という主張がなされていることが挙げられます。

2011年に「日本家政学会誌」に掲載された論文を皮切りに、「睡眠で大切なのはトータルの睡眠時間ではなく、夜いかに適切に睡眠をとるかであるため、3歳児以上はお昼寝を取りやめてはどうか」という提言がなされているのです。

この提言の影響を受け、一部では一斉の午睡を取りやめる自治体もでてきました。

子どもの寝かしつけは保護者にとって、子育ての中悩みの種となることが多いことの一つです。夜の寝かしつけに影響するとあっては、保護者の関心が高くなることも頷けます。

また、保育士にとっては、お昼寝の時間は必要性を理解していても、安全面での緊張を強いられる時間でもあります。お昼寝の時間中に連絡帳などの書類仕事を行なうことになっている保育園もありますが、寝付けない子どもへの対応や、午睡チェックも欠かすことはできません。

静かな中でさまざまなことに気持ちを張り巡らさなければいけないお昼寝の時間は、保育士にとっても注目せざるを得ないでしょう。

※参照 大井晴策,福田一彦 「幼児の昼寝と生活習慣について―保育園における昼寝のあり方を考える― 日本家政学会誌 Vol. 62」

お昼寝の時に使っているのは?布団?タオル?コット?

保育園のお昼寝には、専用のお昼寝布団セットを使用する園が多いです。入園時に保護者に説明し、各家庭で準備してもらいます。

夏場はお昼寝セットに含まれる掛け布団では暑すぎるため、別途タオルケットを用意してもらってもいいでしょう。

最近では、年中エアコンで空調を管理している保育園が多いため、冬でも掛け布団は使わず大判のバスタオルで代用するケースが増えてきました。

タオルは布団に比べて洗いやすいため、いつも清潔に使えるというメリットがあります。さらに子どもたちが一人で扱いやすく、週末ごとの持ち帰りの負担が少ないことから、保護者のあいだでも人気があります。

保育園によっては、コットと呼ばれる簡易ベッドにタオルをかけてお昼寝をおこなうところもあります。コットは子どもたちの背中に接触する部分がメッシュ生地になっており、ひじょうに通気性がよいのが特徴です。

敷き布団に比べると保育士が上げ下ろしする手間も少なく、ダニやほこりがたまりにくいため衛生的に利用できます。

保育園のお昼寝って本当に必要なの?

赤ちゃんのねんねのイメージ

多くの保育園で、ごく普通のこととしておこなわれてきたお昼寝ですが、最近ではそもそも本当にお昼寝が必要なのかどうかについて議論されることがあります。

お昼寝のメリットとデメリットを確認し、年齢にふさわしいお昼寝のありかたについて考えてみましょう。

お昼寝のメリット・デメリット

これまで保育園で当然のように設定されてきたお昼寝ですが、近年、メリットだけでなくデメリットもあるという意見が出てきました。まずはそれぞれについて整理しておきましょう。

お昼寝のメリットとは?

長年多くの園で続けられてきたお昼寝には、たくさんのメリットがあります。代表的なものを4つ挙げてみます。

(1)お昼寝で疲れを取りぐずりを予防する

まだ幼い子どもたちにとって、丸1日の保育は疲れが溜まりやすいものです。昼食のあとにお昼寝時間を設け午前中の疲れを取りのぞくことで、子どもたちは気分をリフレッシュして午後からの活動に参加できるでしょう。

疲れはぐずりの原因にもなりますので、子どもたちの機嫌が悪くなる前にお昼寝を取りいれることはひじょうに効果的です。

(2)お昼寝で注意力低下をふせぎ事故を防止する

眠気が強くなると子どもたちは集中力が落ち、動きが緩慢になります。お昼寝をすることで、注意力の低下をふせぎ、転倒や衝突などのおもいがけない事故を未然に防止できるのです。

(3)夜間の睡眠不足をお昼寝で補う

アメリカの国立睡眠財団によれば、生後1歳までの赤ちゃんは14時間から17時間、2歳までの子どもたちで11時間から14時間、3歳から5歳の子どもたちでも10時間から13時間の睡眠が推奨されています。

保育園の平均開所時間が11時間程度であり、1歳から2歳の子どもたちの託児時間の平均が8時間を超えることから考えると、とくに低年齢の子どもたちは夜の睡眠だけでは十分でないことが理解できるでしょう。

睡眠不足を解消し子どもたちの健やかな成長をうながすためにも、日中のお昼寝には大きなメリットがあります。

(4)保育士にとってもお昼寝時間は重要

子どもたちのお昼寝時間は保育士にとっても重要な意味があります。子どもたちが眠っているあいだ、保育士は連絡帳の記載などの事務作業ができるからです。

もちろん、たとえお昼寝中であっても乳幼児突然死症候群(SIDS)などの心配がありますので完全に目を離してはいけませんが、簡単な日常業務をする余裕は生まれるでしょう。

お昼寝のデメリットとは?

最近話題に上がるのがお昼寝のデメリットです。おもなものを3つ挙げてみます。

(1)お昼寝で生活リズムが崩れる

年齢によって推奨される基準はあるものの、本当に必要な睡眠時間にはやはり個人差があります。

できるだけ個別の事情を考慮しようと思っても、クラスやグループ単位で行動することが多い保育園では、どうしてもお昼寝が全員一緒になりがちです。

子どもによってはそれほどお昼寝が必要ないケースもあるため、そのような子どもの場合、必要以上に長い時間お昼寝となってしまい、夜に自宅で眠れなくなり、かえって生活リズムが崩れるというデメリットが生じてしまいます。

(2)小学生になってもお昼寝の習慣が抜けない

保育園では当たり前におこなわれるお昼寝も、小学校に入学するとできなくなります。

赤ちゃんのころから同じ時間帯にお昼寝を続けていると、小学校でも給食を食べたあときまって眠くなり午後の授業にさしさわる可能性があるのです。

(3)お昼寝で精神的ストレスを感じる

保育園児のなかには、眠たくないのにむりやりお昼寝をさせられることに精神的ストレスを感じる子どもがいます。

また、お昼寝の時間なのに子どもたちがなかなか寝ないと、寝かしつけをおこなっている保育士も「はやく寝かせないといけない」と焦ってしまいイライラが溜まってしまうのです。

お昼寝って何歳まで必要なの?

このようにメリットとデメリットがあるお昼寝ですが、いったい何歳まで必要なのでしょうか。それぞれの家庭環境や個人差があるためきっちりと何歳までと区切りをつけることは難しいです。

しかし、おおむね満5歳を迎えるころ、保育園でいうと4歳児・5歳児クラスになるころにはお昼寝が必要なくなるという意見が多くみられます。

ちょうど同じ年代にあたる幼稚園の年中クラスや年長クラスでは、お昼寝をおこなわないのが一般的です。

幼稚園と保育園では託児時間が異なるため単純に足並みを揃えることはできませんが、幼保連携の流れもあり、保育園でも就学時期が近づく年明けごろからはお昼寝をおこなわないところが増えてきています。

また、「お昼休み」の時間は設けるものの、かならずしも「お昼寝」はしなくていい、あるいは、プールのあるシーズンや大きな行事の練習期間だけお昼寝を実施するなど、子どもたちや各園の事情合わせて柔軟に対応するケースもあります。

睡眠やお昼寝は個人差がひじょうに大きい分野ですから、保護者とも充分に話し合いできるかぎり個別に対応するのがおすすめです。

月齢に応じた理想的なお昼寝時間って?

年齢にふさわしい理想的なお昼寝時間はいったいどのくらいになるのでしょうか。保育園での月齢ごとに、適切なお昼寝時間について具体的に考えてみましょう。

0歳児の理想的なお昼寝時間

新生児期から半年ぐらいまでの赤ちゃんは、お昼寝というより1日のほとんどを眠っている状態で過ごします。この時期は時間を気にせず、赤ちゃんのタイミングに合わせて寝かせてあげるといいでしょう。

半年を過ぎだんだんと昼夜の差が出てくると、保育園でも生活リズムを整えるために「お昼寝」と「それ以外の時間」を意識して設定するように心がけます。

はじめは何度もお昼寝を繰りかえしますが、やがて午前と午後に1回ずつ、それぞれ2時間程度の睡眠に落ちつくことが多いでしょう。

1歳児・2歳児の理想的なお昼寝時間

行動がどんどんと活発になる1歳から2歳にかけてはすこしずつ体力もつき、午前のお昼寝は必要なくなる子どもが増えてきます。保育園でのお昼寝は、午後の1回で設定するといいでしょう。

本人の成長段階や個性によっても違いますが、2時間程度の長いお昼寝時間を必要とする時期です。

まだ自分の言葉で眠気をじょうずに表現できない子どもが多いので、疲れぐあいやぐずりかた、表情などをよく観察してお昼寝時間を調整しましょう。

3歳児の理想的なお昼寝時間

3歳児になると、お昼寝をしたがらない子どもや長時間のお昼寝が不要な子どもが多くなります。

通常、3歳児に対して保育園では午後に1時間前後のお昼寝を設定しますが、幼稚園や在宅で過ごす子どもたちはじょじょにお昼寝をしなくなる時期です。

心身の安定を目指して実施されるお昼寝が子どもたちのストレスになってはいけませんので、無理強いしないように気をつけましょう。

「食後の休憩」というイメージで、寝られる子どもだけお昼寝するのが理想的なのではないでしょうか。

4歳児・5歳児の理想的なお昼寝時間

一般的に4歳児・5歳児になると、8割から9割以上の子どもたちがお昼寝をしなくなるといわれています。そのため最近では、前述のお昼寝のデメリットを考慮し、クラス全体でのお昼寝時間を設定しない保育園が増えてきました。

ただ4歳児・5歳児になったからといって、すべての子どもが急にお昼寝を必要としないわけではありません。

就学につながるこの時期、各家庭の起床時間や就寝時間を考慮にいれながら、保護者の希望をよく聞き、それぞれの子どもたちにぴったりのお昼寝のありかたを模索していくことが大切です。

※参照 ベネッセ教育総合研究所 第4回幼児の生活アンケート報告書2011.3研究所報VOL.6

お昼寝に賛成派の意見

保育園でのお昼寝に賛成する人たちの意見を挙げてみましょう。

  • お昼寝をしないと眠たくてグズグズいう子が多い。お昼寝をしてすっきりすれば、子どもどうしのトラブルが回避できる
  • お昼寝タイムがなくなると保護者への連絡帳が書けず、意思疎通が図れない
  • お昼寝をしないとけっきょく帰宅後に寝てしまい、夜寝られず生活リズムが狂う

お昼寝に反対派の意見

今度は保育園でのお昼寝に反対する人たちの意見を紹介します。

  • 保育園でお昼寝をしすぎて就寝時間が遅れる、寝かしつけが大変だと保護者から苦情がくる
  • いったんお昼寝の習慣がついてしまうと、小学校に入学したあと苦労する
  • いっこうに寝ない子どもをむりやり寝かせるのはかわいそうに感じる。眠れない子をえんえんと寝かしつけるのは、保育士にとってもかえって手間が増えるだけだと思う

お昼寝の環境づくりのコツ

子どもたちに大きな影響のあるお昼寝ですが、お昼寝の時間が子どもたちにとって気持ちのいい時間であるためには、その環境作りに気を配ることが基本となります。

ここでは、「温度と湿度」「明るさ」「場所に」について確認していきましょう。

適切な室内温度と湿度

まずは、室内温度と湿度についてです。

夏であれば、エアコンを上手に活用し、室温が28度前後になるようコントロールしましょう。外気温によって効き方が変わることや、エアコンの当たり方によって極度に寒い場所や暑い場所ができてしまうこともありますので、注意するとよいでしょう。

また、夏は湿度が高くなりがちです。感染症対策の観点を踏まえると湿度は通年を通して60%程度が適切とされています。極端に高くなりすぎないよう配慮し、場合によっては除湿器の利用を検討するとよいでしょう。

冬もいくつか注意したいことがあります。子どもが寝入るときは体温が上がるため、服を着せすぎたり布団を掛けすぎたりしないようにしましょう。

子どもの様子を確認する際は、汗をかいていないか、寝苦しそうな様子がないかに気を配れるとよいですね。

また、夏とは逆に冬は空気が乾燥します。湿度計と加湿器を使って適切な湿度になるように注意しましょう。

※参照 こども家庭庁(旧厚生労働省)「保育所における感染症対策ガイドライン(2018年改訂版)」P27~

明るさの調整

室温と湿度の次は、適切な明るさについてです。

お昼寝時の明るさは、子どもの表情が遠目からも見える程度に暗くすることがおすすめです。

適度に暗くすることは、子どもがこれからお昼寝の時間だと認識する助けになり、スムーズなお昼寝に役立ちます。

一方で暗くし過ぎることは問題です。お昼寝時に心配されることとして、うつぶせ寝による窒息や、乳幼児突然死症候群(SIDS)が挙げられます。

お昼寝中、子どもの様子を確認することは必須のため、子どもの表情や顔色を確認できる程度の明るさが必要となります。

どれくらい照明を落とすか、カーテンを利用するかなどは部屋の環境により異なるため、適度な明るさを目指していろいろと工夫してみましょう。

決まった場所で寝かせる

子どもたちは、いつもと環境が変わるとそわそわして落ち着かなくなってしまうものです。お昼寝をする場所は、やむを得ない場合を除いていつも同じ場所であることが望ましいでしょう。

一人ひとりの寝る場所についても、子どもの特性に配慮しながら決めておけると安心です。隣だとちょっかいを掛け合ってしまう子ども同士を離したり、音に敏感でぐずってしまいがちな子ども同士を離したりするとよいでしょう。

保育士さんの寝かしつけテクニック

お昼寝する乳幼児

保育園でのお昼寝の際に使える、保育士ならではの寝かしつけのポイントと具体的なテクニックをおさらいしましょう。もっとくわしい内容は以下のコラムでも確認できます。

赤ちゃんや子どもを寝かしつける保育士ならではの方法を伝授!

寝かしつけをすみやかにおこなえば、子どもだけでなく保育士のストレスも軽減します。保育士としてのスキルアップのために、ぜひとも身につけておきたいですね。

保育士が覚えておきたい寝かしつけのポイント

保育園でのお昼寝タイムに寝かしつけをおこなう際の1番のポイントは、焦らずおおらかな気持ちで子どもに向きあうことです。保育士自身が焦ってしまうと子どももそわそわと落ちつかず安心して眠りにつくことができません。

室内の明るさや音、温度など、まわりの環境にもしっかりと注意を払い、保育士がおだやかな気持ちで寝かしつけをおこなえば、子どもたちは自然とお昼寝してくれます。

寝かしつけのテクニック1:トントンする

子どもたちをすばやくお昼寝させるため、保育園でよく使われるテクニックのひとつが、背中や肩、お腹など体の一部を優しくトントンする方法です。子どもたちの呼吸や心音に合わせるように一定のリズムでトントンするとよいでしょう。

子どもによってはすこし強めにトントンされるのが好きな場合があります。優しいトントンでは眠れなさそうにしているときは子どもの様子をよく見きわめ、強弱をつけてトントンしてみるのがおすすめです。

寝かしつけのテクニック2:添い寝する

添い寝での寝かしつけは、保育園のお昼寝時間に子どもたちが喜ぶテクニックのひとつです。お互いの体を固定するように寄り添い、保育士の体温をそっと子どもに伝えましょう。

保育士が寝たふりをし、わざと寝息をたててみるのも効果的です。寒い季節は保育士の脇に子どもの腕をはさみこんだり、お互いの脚をからませたりすると、手足が温まりすみやかにお昼寝できます。

寝かしつけのテクニック3:子守歌をうたう

保育園のお昼寝は各クラス一斉におこなわれないケースがよくあります。室内が静かすぎると、かえって隣室や廊下から聞こえるほかのクラスの子どもたちの声が気になることもあるでしょう。

そこで、あえてまったく無音の状態にせず、優しく子守歌を歌い気をまぎらわせるのが、じょうずな寝かしつけのテクニックなのです。いつもよりおだやかな声ですこしゆっくりと歌うと、子どもたちはここちよく眠れるでしょう。

寝たがらない子の対応について

お昼寝のポイントをお伝えしてきましたが、さまざまな工夫をしても、なかなか眠ることができない子どももいるかもしれません。無理に寝かせようとすることは、子どもにとっても、保育士にとってもストレスになってしまいます。

このようなときは、保護者にも家での様子を聞いてみることが解決策になる場合もあります。家庭により登園時間は異なるため、起床時間が遅いことが寝付けない原因になっていることもあるためです。

特に3歳以上児では、体力的にお昼寝を必要としない子どももいます。寝たがらない子どもで、お昼寝のときに寝付けない様子でも、午後の活動や帰宅後に元気に過ごしている様子であれば無理に寝かせる必要はないでしょう。

お昼寝をしない子どもはお昼寝をする子どもたちとは少し場所を離して、小さな声で絵本を読んだり、お昼寝をしなくても体を休められるよう工夫しましょう。

寝かしつけの注意点

お昼寝の際は、子ども達が安心して寝入ることができる環境を整えるのが大切ですが、保育士はそのために一定の緊張感を持って過ごす必要があります。

それは睡眠中は、うつぶせ寝による窒息や、乳幼児突然死症候群(SIDS)の発症などの危険性があるためです。

2019年の内閣府の調査では全国の保育所や幼稚園、認定こども園で2018年に起きた事故が1641件、このうち子どもが死亡したケースが9件。そしてその8件が睡眠中に生じており、うち2件がうつぶせ寝であったと報告されています。

多くの自治体や保育所で睡眠中の危険は認識されており、注意喚起が続けられています。

子ども達の安全を守るためには、注意するべきポイントを抑えながら、各保育環境に合わせ、どのようなことができるか考え続けていくことが必要でしょう。

ここでは、重要な注意点を確認していきます。

うつぶせ寝

先の内閣府からの発表からも読み取ることができますが、うつぶせ寝の危険性に関しては、広く注意喚起が行なわれています。

うつぶせ寝は窒息の原因になることや、乳幼児突然死症候群(SIDS)の発症の危険性を高めてしまうのです。2016年に内閣府から発表されたガイドライン※でも、「医師からうつぶせ寝を進められている場合以外、乳児の顔が見える仰向けに寝かせることが重要。」とされています。

お昼寝の時間に保育士は、子ども達の寝る体勢に目を配り、うつぶせになって寝ている子どもは仰向けに直して寝かせることが大切です。

中には、うつぶせにならないと寝付けない子どももいるかもしれません。そういった場合は近くで見守り、寝入ったらなるべく早く仰向けに直しましょう。

※参考 こども家庭庁「教育・保育施設等における事故防止及び事故発生時の対応のためのガイドライン」

定期的なチェック

次に重要なのが、定期的なチェックです。

睡眠中の見守りの方法については、各自治体や、厚生労働省などから指針が示されています。

たとえば東京都では0歳児は5分に1回、1~2歳児は10分に1回を望ましい間隔とし、子どもの寝つきや睡眠中の姿勢、顔色、呼吸の状態、体温などを確認するように示しています。

チェックする担当は専任者を設け、事務仕事や他の業務は担当者以外の保育士が行ないます。また、複数の子どもが同時にぐずってしまうと、十分なチェックができなくなる危険性があります。

そのため、ほかの業務にあたっている保育士も状況に応じて専任担当者をサポートできる体制を整えておくとよいでしょう。

また、あくまで補助的なものとなりますが、お昼寝向けのチェックセンサーの導入も広がってきています。

センサーにはいくつかタイプがありますが、たとえば、園児のおむつや肌着、パジャマなどに取り付けられるほどの小型で、うつぶせ寝の動きの察知や、皮膚表面の温度や呼吸の変化も検知する機能があるものもあります。

保育士によるチェックの代替になるものではありませんが、負担軽減や更なる安全の追及のために導入を検討してもよいでしょう。

子どもの所持品や服装にも気を配ろう

特に重要なのは以上の2点、「うつぶせ寝にしないこと」「定期的なチェック」ですが、ほかにも注意したい点があります。

睡眠中に怖いのが窒息ですが、原因として何等かの原因で口がふさがってしまったり、小物を誤飲してしまったりすることが挙げられます。

内閣府の示したガイドラインの中では、以下の項目が挙げられています。

  • やわらかい布団やぬいぐるみ等を使用しない。
  • ヒモ、またはヒモ状のもの(例:よだれかけのヒモ、ふとんカバー の内側のヒモ、ベッドまわりのコード等)を置かない。
  • 口の中に異物がないか確認する。
  • ミルクや食べたもの等の嘔吐物がないか確認する。

一見、お昼寝をするのに危険はないように見えても、小さなサイズの髪留めをお昼寝中に外して口に含んでしまったりと、思わぬ危険性が潜んでいることがあります。

子どもが身に着けているものに注意を払い、お昼寝前にポケットの中なども確認できるとより安全に過ごすことができるでしょう。

事故に至らない場合でも、危ないかもしれないなと思ったら、保育士同士でリスクを共有し合い、より安全性を追及していきましょう。

保育園でのお昼寝の意義を知り、必要性の有無を個別に判断しよう

赤ちゃんの手

一人ひとりの顔がみんな違っているように、子どもたちはそれぞれ必要な睡眠時間も家庭の環境も異なります。そのため年齢が上がっていくにつれ、クラス全員が揃って同じようにお昼寝することは、だんだんと難しくなるでしょう。

保護者と保育士の双方が、自宅での睡眠と保育園でのお昼寝の情報を共有し、よりよいお昼寝のありかたを模索していくことで、子どもたちはこの時期の成長に欠かせない適切な睡眠習慣を身につけられるのです。

保育士がお昼寝のメリットとデメリットをしっかりと把握し、子どもたちにふさわしいお昼寝スタイルを見つけてあげられるといいですね。


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監修者 PROFILE

コラム監修者 和氣 タイ子 Waki Taiko
都内の認可保育園にて園長経験7年、保育経験のべ30年以上のベテラン保育士。現在は研修など人材育成に注力。

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