保育士のキャリアアップ研修とは?主任保育士になるには?
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#保育士の働き方
作成日 2020/02/19
更新日 2024/05/09
保育士のキャリアアップ研修とは?主任保育士になるには?
保育士の昇進や処遇改善とともに、保育士としての専門性の向上に目標を持って取り組めるようにするため、2017年4月からキャリアアップ研修制度が始まりました。
保育士のキャリアアップ研修で学ぶ内容、キャリアアップの仕組み構築のために新設された役職など、詳しく見てみましょう。
また、園の運営に大きくかかわり、職場の保育士をまとめる主任保育士の仕事内容や気になる給料についてもあわせてご紹介します。
※わたしの保育では、「しょうがい」の表記について「障がい」の表現を通常用いています。しかし、本コラムで触れる厚生労働省の定めるガイドラインでは「障害」の表記を用いているため、本コラムではそれに準じて「障害」にて表記しております。
目次 |
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保育士のキャリアアップ研修とは?
キャリアアップ研修では、職務内容に応じた専門性の向上に目標を持って取り組めるようにするために始まりました。
キャリアパスを見据えた研修機会の充実と体系化
子どもを取り巻く環境が変化している近年、保育園に求められる役割も多様化しています。なかでも保育士は、より専門性の高い知識や質の高い保育が求められています。
そのため日々の業務だけでなく、専門性の向上を図ることがこれからも働き続けるうえで重要です。
保育士は自らの職位や職務内容などに応じて、組織の中で求められている役割を理解し、専門性の高い必要な力を身につけることが必要であるとし、そのためのキャリアアップの道筋を明確化しそれに合わせた研修体系の構築化することを目的とした、「保育士等キャリアアップ研修ガイドライン」※が2017年4月に定められました。
保育園として、組織的な対応や専門性の向上だけでなく、保育士が職場に定着しやすい環境を整えること、人材交流の活性化による多様なキャリア形成などの面でも効果が高いと考えられています。
※厚生労働省「保育士のキャリアアップの仕組みの構築と 処遇改善について」
キャリアアップ研修の研修分野
キャリアアップ研修は、保育現場でのリーダー的職員の育成に関する研修を行ないます。研修の実施主体は、都道府県または都道府県知事の指定した研修実施機関です。
研修分野は
- 専門分野別研修
- マネジメント研修
- 保育実践研修
と大きく分けて3つあります。それぞれの研修対象者と研修内容を見てみましょう。
専門分野別研修
保育現場で、6つの専門分野に関してリーダー的な役割を担う人や今後役割を担うことが見込まれる人が対象です。
1. 乳児保育(おもに0 ~ 3歳未満児向けの保育内容)
乳児保育に関する理解を深めるだけでなく、乳幼児にとって適切な環境を構成し、子ども一人ひとりの発達の状態に応じた保育を行なう力を養うことや、乳児保育に関する適切な助言や指導をほかの保育士にもできるように、実践的な能力を身に付けることをねらいとしています。
おもな研修内容は、乳児保育の意義や環境、適切なかかわり、発達に応じた保育内容、指導計画や記録および評価などです。
2. 幼児教育(おもに3歳以上児向けの保育内容)
幼児教育に関する理解を深めるだけでなく、 幼児にとって適切な環境を構成し、子ども一人ひとりの発達の状態に応じた幼児教育を行なう力を養うことや、幼児教育に関する適切な助言や指導をほかの保育士にもできるように、実践的な能力を身に付けることをねらいとしています。
おもな研修内容は、幼児保育の意義や環境、適切なかかわり、発達に応じた保育内容、指導計画や記録および評価、小学校との接続などです。
3. 障害児保育
障害児保育に関する理解を深めるだけでなく、適切に計画され、子ども一人ひとりの発達の状態に応じた障害児保育を行なう力を養うことや、障害児保育に関する適切な助言や指導をほかの保育士にもできるように、実践的な能力を身に付けることをねらいとしています。
おもな研修内容は、障害の理解や障害児保育の環境、発達の援助、家庭や関係機関との連携、障害児保育の指導計画や記録および評価などです。
4. 食育・アレルギー対応
食育に関する理解を深めるだけでなく、食育計画の作成と活用が適切にできる力を養うことや、アレルギー対応に関する深い理解、アレルギー対応を適切にする力を養うこと、食育やアレルギー対応に関する適切な助言や指導をほかの保育士にもできるように、実践的な能力を身に付けることをねらいとしています。
おもな研修内容は、栄養に関する基礎知識、食育計画の作成と活用、アレルギー疾患の理解、保育所における食事の提供ガイドラインやアレルギー対応ガイドラインなどです。
5. 保健衛生・安全対策
保健衛生に関する理解を深めるだけでなく、保健計画の作成と活用が適切にできる力を養うこと、安全対策に関する深い理解、対策を適切に講じることができる力を養うことがねらいです。
また、保健衛生や安全対策に関する適切な助言や指導をほかの保育士にもできるように、実践的な能力を身に付けることも同じくねらいとして挙げられます。
おもな研修内容は、保健計画の作成と活用、事故防止・健康安全管理、保育所における感染症対策ガイドラインなどです。
6. 保護者支援・子育て支援
保護者支援や子育て支援に関する理解を深めるだけでなく、支援を適切に行なう力を養うこと、保護者支援や子育て支援に関する適切な助言や指導をほかの保育士にもできるように、実践的な能力を身に付けることをねらいとしています。
おもな研修内容は、保護者支援・子育て支援の意義、保護者に対する相談援助、地域における子育て支援、虐待予防などです。
マネジメント研修
保育現場で、専門分野におけるリーダー的な役割を担う人としての経験があり、主任保育士の下でミドルリーダーの役割を担う人や、今後役割を担うことが見込まれる人が対象です。
ミドルリーダーとしての役割を主任保育士の下で担う立場に求められる役割と知識を理解することや、円滑な保育所運営と保育の質を高めるために必要なマネジメント能力、リーダーシップ能力を身に付けることをねらいとしています。
おもな研修内容は、マネジメントの理解、リーダーシップ、組織目標の設定、人材育成、働きやすい環境づくりなどです。
保育実践研修
保育士試験は合格しているものの、保育現場での実習経験が少ない人や、潜在保育士のように、長期間保育現場での保育を行なっていない人が対象です。
子どもに対する理解を深めること、主体的にさまざまな遊びや環境を通じた保育の展開を行なうために保育者が必要な能力を身に付けることをねらいとしています。
おもな研修内容は、保育における環境構成、子どもとのかかわり方、身体を使った遊び、言葉や音楽を使った遊び、物を使った遊びなどです。
上記「専門分野別研修」「マネジメント研修」「保育実践研修」の3つの研修分野それぞれの研修時間は、1分野につき15時間以上と決められています。
研修は、指定保育士養成施設の教員もしくは、研修内容に関する十分な知識と経験を有していることを都道府県知事によって認められた人が、講師として行ないます。
受講者が知識や技能を円滑・主体的に習得できるよう、講義形式や演習、グループ討議など工夫された内容で実施されます。
研修修了者の質の確保を図るため、
- 各研修をすべて受講していること
- 研修受講後に提出するレポート内容で、研修内容に関する知識や技能の習得、実践するための基本的な考え方や心得の認識が確認できること
などによって研修修了証が交付されます。
キャリアアップの仕組み構築のために新設された役職
保育士の役職は園長と主任保育士だけ、という場合が多く、どれだけ経験や実績を重ねても給与への反映が少ないという処遇が従来より問題視されてきました。
このような豊富な実績やスキルが給与に反映されないことは、保育士の離職にもつながります。
実際に多くの保育士の離職理由として、給与の安さが挙がっています。
そこで、保育士として、段階的にキャリアアップできる仕組みを構築するため、2017年4月に新たに以下の3つの役職が創設されました。
- 職務分野別リーダー
- 専門リーダー
- 副主任保育士
これらは一般保育士と主任保育士の間に設けられたポジションです。
新しく3つのポジションが増えたことで、役職に就きにくかった若手や中堅保育士が役職に就きやすくなり、処遇改善が明確になりました。
今までは給与に反映されなかった努力も、ある程度反映されるようになったのです。
受講対象者や条件は?
新設された3つの役職それぞれの、研修内容や受講対象者は以下の通りです。
職務分野別リーダー
キャリアアップの最初のステップである職務分野別リーダーは、専門分野のリーダーとして働きます。
経験年数はおおむね3年以上の保育士が対象で、専門分野別研修※のうち担当する分野の研修を修了し、職務分野別リーダーとしての発令を受ける必要があります。
※専門分野別研修は以下の6分野
- 乳児保育
- 幼児教育
- 障害児保育
- 食育・アレルギー対応
- 保健衛生・安全対策
- 保護者支援・子育て支援
専門リーダー
保育士経験がおおむね7年以上で、職務分野別リーダーを経験すると専門リーダーにキャリアアップできます。
専門分野別研修のうち、4つ以上の分野の研修を修了し、専門リーダーとしての発令を受ける必要があります。
副主任保育士
保育士経験がおおむね7年以上で、職務分野別リーダーを経験すると副主任保育士にキャリアアップできます。
専門分野別研修のうち、3つ以上の分野の研修とマネジメント研修を修了し、副主任保育士として発令を受ける必要があります。
キャリアアップ研修受講でもらえる手当
キャリアアップ研修を受講し、新しい役職に就くことで処遇改善も行なわれます。職務分野別リーダーは月額5,000円、専門リーダーと副主任保育士は月額40,000円です。
この処遇改善費は、対象者全員に満額が必ず支給されるというわけではなく、各園の職員数によって、満額支給対象者の数が異なります。
副主任保育士と専門リーダーは、園長と主任を除いた1/3の人数まで、職務分野別リーダーは園長と主任を除いた1/5の人数までがひとつの園の上限と決められています。
また、それぞれの園の方針によって、分配される金額は変わります。
キャリアアップ研修が創設されたことにより、保育の専門性向上に目標を持って取り組めるようになっただけではなく、給与アップという目に見える成果にもつながったのです。
キャリアアップ研修を受けるメリットとは?
キャリアアップ研修を受けるメリットは、処遇改善につながる役職に就けることだけではありません。
メリット1. 転職・復職時の自信につながる
キャリアアップ研修は、全国で実施されています。一度受講し修了したものは全国で有効です。離職後に再就職する場合でも、以前の研修修了の効力は引き続き有効です。
もし、産休や育休などでしばらく現場を離れていても、転勤などで違う土地に引っ越しても、新しい職場で活かせます。築いてきたキャリアをそのまま活かせることは、仕事復帰時の大きな自信になるでしょう。
メリット2. 給与が上がる
キャリアアップの制度が整い役職が新設されたことにより、役職手当を受け取れる場合があります。ただし、所属している園によって満額の手当を受け取れない場合もありますが、従来よりも給与は増えるでしょう。
一時的な給与アップではなく、長期的に保育士としての価値を高め、より高い給与を得られる基盤が整い、確実にステップアップすることで実力にあった給与を受け取れるのです。
メリット3. 専門知識が深まる
キャリアアップ研修は、各専門分野について15時間以上という長い時間をかけて、じっくりと学びます。そのため、幼児教育や安全管理、保護者支援など幅広い知識がより深まります。
そして研修を通して学んだ知識や経験は、日々の保育に活かされ、子どもたちの成長だけでなく自分自身のさらなるスキル向上にもつながっていくのです。
主任保育士になるには?
保育現場のリーダーである主任保育士。職務分野別リーダー、専門リーダー、副主任保育士とキャリアを重ねた先に見える役職に、憧れを抱く人も多いのではないでしょうか。
主任保育士の役割・仕事内容
主任保育士は、保育士たちの頼れるリーダーであり、現場の最高責任者という重要なポジションです。保育士にとっても、保育園にとってもなくてはならない存在でしょう。
園長のサポートや、園長の代理として園全体の運営を支えるうえで、管理職としての知識や力量を求められる重要な役割を担います。
方針や規模にもよりますが、多くの保育園では、主任保育士は決まったクラスは担当せず、中立的な立場で園全体をサポートしています。
主任保育士の仕事は、保育士たちと園長をつなぐ架け橋として、それぞれの意見を聞くことで広い視野を持ち、問題解決をしながらよりよい保育園を作るために行動することが求められます。
そんな主任保育士の仕事内容は、以下のようなものが挙げられます。
保育園全体の運営管理
保育士が作成した各クラスのカリキュラムや指導計画、運動会や発表会などの園全体で執り行なう行事、保育園独自の式典など、園全体に目を配り、運営管理を行ないます。
そしてただ管理するだけでなく、園が掲げている保育方針を実現できるように働きかけていきます。
日々の保育や行事だけでなく、教材の購入や備品の選定、業者とのやりとりなど、園としての対応を求められる場面でも判断や決定を下す役割を担います。
保育士の育成
保育園全体の運営をしっかりと進めていくために重要となる、保育士の育成や指導も主任保育士の大きな役割です。
保育士全体の質を向上させるために、知識を深めスキルを伸ばせるようにアプローチします。また、保育士同士が働きやすい職場環境を作るために、保育士の悩み相談を受けたりトラブルを未然に防いだりと、マネジメント業務も行ないます。
保護者対応
子どもを預ける保護者にとって、主任保育士はとても頼りになる存在です。
保育経験だけでなく人生経験も豊かな主任保育士には、新人保育士には相談できないような保護者の悩みや、子育ての相談が集まりやすいものです。
担任とは違う距離感で接してもらえることは、保護者にとっては大きな安心につながり、保育園との信頼関係構築にもなります。
地域社会とのかかわり
保育園の運営管理だけでなく、地域や社会とのやりとりも大切な仕事です。自治体や小学校とのやりとり、書類作成、地域施設との交流、園庭開放による子育て世代とのかかわりなども行ないます。
すべての仕事において前面に立って行なわれる主任保育士の対応や評判が、保育園の評判につながるという重要なポジションでもあるのです。
主任保育士になるためにするべきこと
主任保育士になるために、特別な資格は必要ありません。もちろん保育園の中でも重要なポジションである主任保育士として選ばれるためには、勤続年数の長さや保育経験の豊富さが重要です。
しかしそれ以上に、園長や保育士だけでなく、保護者や子どもたちから信頼されているかどうかが欠かせません。
意思表示をしておく
園によってどうやって主任保育士を選ぶかという方針は異なりますが、経験年数や保育スキル、本人の意思は必要とされています。
園長だけでなく、上司や先輩保育士と今後の働き方について早いうちから話しておきましょう。
将来的に主任保育士を目指しているという意思表示を示しておくことで、必要な仕事やフィードバックをより多くもらえるようになり、のちに主任保育士候補として挙がりやすくなります。
実績と経験年数を重ねる
令和元年に内閣府(その後はこども家庭庁)が公表した「幼稚園・保育所・認定こども園等の経営実態調査報告書」※によると、主任保育士の平均勤続年数は、私立で21.7年、公立で25.1年です。いずれも平均20年以上という長い勤務年数を経た後に主任保育士に就任しています。
このような統計からみても、主任保育士として周りに頼られるようになるためには、まずは着実に経験を積みましょう。経験年数では主任になる絶対条件ではありませんが、周りから頼られる一つの指標となります。
※参考:政府統計の総合窓口 「幼稚園・保育所・認定こども園等の経営実態調査報告書」
積極的に研修に参加する
主任保育士が受ける研修や講座は、全国で開催されています。将来的に主任保育士を視野に入れているのであれば、早い段階から積極的にこれらの研修に参加しておきましょう。
経験年数だけでなく、確かな知識を身に付けることは保育士としても財産となります。
また、同じような将来を思い描く人とのつながりや出会いのきっかけにもなり、いい刺激にもなるはずです。
主任保育士の給料とは?
主任保育士の給料は、勤続年数や公立・私立どこに勤務しているかなどによって異なります。
平成29年度に内閣府が公表した「幼稚園・保育所・認定こども園等の経営実態調査」報告書によると、常勤の主任保育士の給与平均は、公立の場合、51万8,548円、私立では、39万7,212円でした。
一般の保育士の月収と比較すると、約5〜10万円程度多いようです。
主任保育士の給与は、主任手当として給与に加算されます。なお、加算される金額は園によって差があり、明確には決められていません。
また、勤務する土地によっても金額は変わります。主任保育士として転職するのであれば、採用段階での給与交渉も可能です。
今後のキャリアアップを目指すのであれば、ほかの園に転職するのもひとつの手段です。
主任保育士については、こちらにも詳しくまとめてあるのでご参照ください。
将来を見据えたキャリアアップを
給与が上がりにくいといわれていた保育士も、段階的にキャリアアップできる仕組みが構築され研修制度が整うなど、長く働き続けられるよう少しずつ変化しています。
主任保育士を目指すだけでなく、職務分野別リーダー、専門リーダー、副主任保育士などの新しい道も選択可能です。
保育士としての経験を積み着実なキャリアアップを考えている、これからも質の高い保育ができる保育士として働き続けたい、という今こそ、キャリアアップ研修にチャレンジしてみてはいかがでしょうか。
「わたしの保育」を運営するテンダーラビングケアサービスは、保育のお仕事専門の人材紹介会社として、多くの保育士さんのサポートを行なっています。
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監修者 PROFILE
和氣 タイ子 Waki Taiko都内の認可保育園にて園長経験7年、保育経験のべ30年以上のベテラン保育士。現在は研修など人材育成に注力。