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コラム

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#保育士の働き方

作成日 2020/01/17

更新日 2024/05/09

保育士等キャリアアップ研修について徹底解説!

ノートパソコンを持つ女性

保育士等キャリアアップ研修は、平成29年に厚生労働省によって新設された制度です。保育士の昇進や処遇改善がスムーズに進むことを目指して導入されました。

今回は、まだ知らないことが多いキャリアアップ研修の概要とくわしい目的、受講するメリットや対象者、さらにはそれぞれの研修分野の具体的な内容について、こまかく解説していきます。

※わたしの保育では、「しょうがい」の表記について「障がい」の表現を通常用いています。しかし、厚生労働省の定める研修名などが「障害」の表記を用いている為、本コラムではそれに準じて研修名を指す場合は「障害」にて表記しております。

目次

保育士等キャリアアップ研修とは?

イメージ(キャリアアップ)

最近よく耳にするようになったのが、保育士等キャリアアップ研修です。保育士等キャリアアップ研修はどのような制度なのか、何を目的に導入されたのかについて確認してみましょう。

保育士等キャリアアップ研修の概要

これまで、保育士の役職といえば、園長、主任保育士のみに限られていました。担任やリーダーなど、保育園内部での役職はありましたが、どれも対外的に通用する、あるいは、転職後も持ち越せるものではありませんでした。

そこで、厚生労働省は、平成29年4月に「保育士等キャリアアップ研修の実施について」を公表しました。これを受け、「職務分野別リーダー」「専門リーダー」「副主任保育士」という3つの役職があらたに設置されたのです。

これらの役職は、一般保育士と主任保育士の中間に位置します。園によって呼び方は異なることがありますが、保育士等キャリアアップ研修の修了証があれば、全国共通でその資格を認めるようになりました。

保育士等キャリアアップ研修の目的

保育士等キャリアアップ研修の最大の目的は、保育士の処遇改善です。厚生労働省は制度創設にともない、保育士の給与底上げを目指し、全職員に対して2%(月額6,000円程度)の処遇改善策を制定しました。

保育士等キャリアアップ研修の修了者については、保育園の規模に応じて一定の人数制限はありますが、職務分野別リーダーには月額5,000円、副主任保育士、専門リーダーに対しては、最大で月額4万円の処遇改善手当が支給されます。

保育士等キャリアアップ研修のもうひとつの主要な目的は、保育士の離職を減らすことです。主任保育士の平均勤続年数は20年前後であるのに対して、キャリアアップ研修制度導入以前の保育士の平均勤続年数はわずか7.6年しかありませんでした。

このことから、多くの保育士が、主任保育士の役職にたどりつけずに離職している状況がわかりました。そこで、保育士等キャリアアップ研修制度では、3年、7年の節目を目途に役職を新設したのです。

中堅保育士でも身近な目標にできる3つの役職が増えたことで、保育士を続けるモチベーションアップにつながり、離職率を下げる効果が期待された制度といえます。

保育士等キャリアアップ研修によって、保育士不足が少しでも解消されれば、昨今の大きな課題である待機児童問題の解決にもつながるでしょう。

キャリアアップ研修を受けるメリットとは?

褒める女性

保育士等キャリアアップ研修を受けることで、昇任や昇給のチャンスが生まれます。実は、これ以外にもさまざまなメリットがあるのです。

キャリアアップ研修で保育の専門知識を深める

保育士等キャリアアップ研修で取り扱う分野は、日常の保育に直結する乳児保育や幼児保育だけでなく、障がい児保育や食育、保護者支援まで多岐にわたります。さらに、1分野ごとに15時間以上の受講が必要です。

内容もただ講義を聴くだけではなく、保育士自身が主体的に参加するものが多いです。レポート提出などを通じて、実践で役立つ知識と技術が身につけられるものばかりなのです。

そのため、参加した保育士は、日常の保育や今後の保育士人生の財産となる専門知識を広く深く学べます。保育士等キャリアアップ研修によって、最新の知識に触れ、保育スキルを高められるのがメリットのひとつです。

キャリアアップ研修の修了資格は全国共通

保育士等キャリアアップ研修は、都道府県ごとに行なわれていますが、その修了証は全国で通用します。そのため、結婚や引越しにともない別の都道府県で転職しても安心です。

また、都道府県主催のキャリアアップ研修であれば、どこで受けても受講料は無料(テキスト代のみ必要)です。すべての都道府県で開催されているため、自宅や保育園の近くで受講できます。

従来、都市圏から離れた地域では、保育士等キャリアアップ研修と同レベルの充実した研修を受けるために遠方への移動が必要となり、費用がかさむのが一般的でした。

全国の保育士にとって一律の水準の研修を近隣で受けられることも大きなメリットなのです。

キャリアアップ研修を受けておけば転職や復職の際も安心

保育士等キャリアアップ研修を受講し交付される修了証は、更新の必要がありません。いったん保育現場を離れても、復職の際のアピールポイントにできるでしょう。

キャリアアップ研修のなかでも、職務分野別リーダー研修はおおむね3年以上という短い経験年数から受講可能で、早期の転職を考えている人は積極的に取り組みたい研修です。

乳児保育や障害児保育の分野を受講しておけば、保育園だけでなく、乳児院や児童発達支援施設などへの転職を有利に進められる可能性があります。

保育士等キャリアアップ研修の受講は、自分自身の将来の選択肢を広げられるという面でもメリットがあるのです。

キャリアアップ研修の受講対象者とは?

キーボードと女性

保育士等キャリアアップ研修はどのような人が受けられるのでしょうか。具体的な対象者や受講条件などについて確認してみましょう。

保育士等キャリアアップ研修はいつから誰が受けられるの?

厚生労働省は、保育士等キャリアアップ研修を受講する目安として、3年、7年という基準を設けています。

現場で基礎を学び、おおむね3年以上の経験を得たころから、保育士としてのステップアップを目指すという実務的な流れを考慮してのことでしょう。

対象は正規職員だけでなく、パートタイム、派遣など雇用形態は問いません。ただし、保育士等キャリアアップ研修の申し込みは施設を通じて行なうため、受講には施設内での調整が必要な場合もあります。

職務分野別リーダーになるためには

保育士等キャリアアップ研修で設けられた3つの役職のうち、もっとも少ない経験年数で目指せるのが職務分野別リーダーです。経験年数はおおむね3年以上とされています。

担当する職務分野を選んで研修を受講し、修了後は、選択分野にかかわる職務分野別リーダーとしての発令を保育園から受けることで正式に任命されます。

保育園によっても異なりますが、「乳児保育リーダー」「食育・アレルギーリーダー」などと呼ばれることになるでしょう。

職務分野別リーダーになると、各自治体から保育園に処遇改善費として月額5,000円の補助金が支給され、本人に処遇改善手当が支払われます。

手当支給の対象となる職務分野別リーダーの人数の上限は、保育園の規模によって異なります。挑戦してみたい場合は、かならず保育園と相談しましょう。

専門リーダーになるためには

職務分野別リーダーの経験者が保育士等キャリアアップ研修で4つ以上の専門分野を修了することで、専門リーダーになる資格を得ます。厚生労働省が想定する対象者の経験年数は、おおむね7年以上です。

すべての研修を修了し、保育園から専門リーダーとしての発令を受けることで、正式に役職に就くことができます。

専門リーダーの設置で自治体から保育園に支給される処遇改善補助金は月額4万円で、本人への処遇改善手当となります。こちらも保育園の規模により、副主任保育士と合わせての対象上限人数が設けられています。

副主任保育士になるためには

副主任保育士になるためには、保育士等キャリアアップ研修で3つ以上の専門分野とマネジメント研修を修了しなければなりません。経験年数は専門リーダーと同様、おおむね7年以上と想定されています。

副主任保育士も、その前提として、職務分野別リーダーの経験が必須です。研修終了後は保育園から発令を受け、主任保育士を補助する存在としての活躍が期待される役職といえるでしょう。

副主任保育士の処遇改善補助金として、保育園に月額4万円が支給され、本人への処遇改善手当となります。前述のように、対象人数は、保育園の規模だけでなく、専門リーダーの数によっても左右されますので、保育園と事前にしっかり相談することが不可欠です。

キャリアアップ研修の分野別研修内容について

勉強する人

保育士等キャリアアップ研修の分野は全部で8つあります。1分野の受講時間は15時間以上で、講義形式のほか、演習やグループ討論などを組み合わせる研修が主流です。

具体的にそれぞれの研修分野について解説していきましょう。

乳児保育研修の分野の研修のねらいと内容

乳児保育分野のキャリアアップ研修は、おもに0~3歳未満児向けの保育に関する理解を深める内容です。ほかの保育士に助言や指導ができるような実践的な能力を身につけることが目標です。

具体的には、乳児保育の意義や環境、乳児への適切なかかわり方、乳児の発達に応じた保育内容、乳児保育の指導計画、記録及び評価などについてていねいに学びます。

幼児教育研修の分野の研修のねらいと内容

おもに3歳以上児向けの保育内容に関する理解を深めるのが、幼児教育分野のキャリアアップ研修の特徴です。研修修了後は、ほかの保育士に対しても幼児教育に関する適切な助言や指導ができるようになるでしょう。

幼児教育の意義や環境、幼児の発達に応じた保育内容、幼児教育の指導計画、記録及び評価、小学校教育との接続などが研修の具体的な内容です。

障害児保育研修の分野の研修のねらいと内容

障害児保育のキャリアアップ研修では、自身やほかの保育士が個々の子どもたちの発達に応じた適切な保育ができるよう障害児児保育に対する理解を深めます。

厚生労働省が提示する具体的な研修内容としては、障害の理解、障害児保育の環境、障害児の発達の援助、家庭及び家庭機関との連携、障害児保育の指導計画、記録及び評価が挙げられています。

食育・アレルギー対応研修の分野の研修のねらいと内容

食育・アレルギー対応の分野のキャリアアップ研修には、大きく分けて3つのねらいがあります。はじめに、食育に関する理解を深め、食育計画の作成と活用する力を身につけることです。

さらに、近年増加するアレルギーに関する理解を深め、アレルギーを持つ子どもたちに適切に対応する能力を養います。そして、これらを活かし、ほかの保育士やスタッフに食育やアレルギー対応に関する適切な助言や指導を行なうのです。

おもな研修内容としては、栄養に関する基本知識、食育計画の作成と活用、アレルギー疾患の理解、保育所における食事の提供ガイドラインやアレルギー対応ガイドラインなどがあります。

保健衛生・安全対策研修の分野の研修のねらいと内容

保健衛生・安全対策の分野のキャリアアップ研修では、3つの目的が掲げられています。まず、保健衛生に関する理解を深め、保健計画の作成と活用を適切に行なえるようになることが1つ目のねらいです。

次に、安全対策に関する理解を深めて、子どもたちが事故などに巻き込まれないよう適切な対策を取る能力を身につけます。

最後に、これらの保健衛生や安全対策に関する知識を活かし、ほかの保育士やスタッフに助言や指導を行なうことで、保育園全体で子どもたちを守る実践的な能力の獲得を目指すのです。

具体的な内容としては、以下の三つが挙げられています。

  • 保健計画の作成と活用、事故防止及び健康安全管理、保育所における感染症対策ガイドライン
  • 保育の場において血液を介して感染する病気を防止するためのガイドライン
  • 教育・保育施設等における事故防止及び事故発生時の対応のためのガイドライン

保護者支援・子育て支援研修の分野の研修のねらいと内容

虐待や貧困家庭への対応の必要性が高まっている現状に合わせ、保護者支援・子育て支援の分野がキャリアアップ研修のひとつに含まれています。

詳細な内容は、保護者支援・子育て支援の意義、保護者に対する相談援助、地域における子育て支援、虐待予防、関係機関との連携、地域資源の活用などです。

保護者支援・子育て支援に関する理解を深め、ほかの保育士に助言や指導を行ないながら、保護者に寄り添った対応ができる能力を身につけます。

マネジメント研修の分野の研修のねらいと内容

マネジメント分野のキャリアアップ研修では、主任保育士を支えるミドルリーダーとしての役割を担うために必要な知識の獲得を目指します。

マネジメント研修を通じて、保育園の円滑な運営や園全体の保育の質の向上につながるマネジメントのポイントを実践的に知ることで、リーダーシップ能力を身につけられるでしょう。

具体的には、マネジメントの理解、リーダーシップ、組織目標の設定、人材育成、働きやすい環境づくりなどの内容を学びます。

保育実践研修の分野の研修のねらいと内容

保育実践分野のキャリアアップ研修は、ほかの7つの研修とは異なり、保育現場での実習経験の少ない人や、ブランクのある潜在保育士を対象とした内容です。

この研修を受講すれば、子どもに対する理解を深め、保育士が主体的に保育を展開するために必要な能力を獲得できるでしょう。

具体的な内容は、保育における環境構成、子どもとのかかわり方、身体を使った遊び、言葉・音楽を使った遊び、物を使った遊びなどです。

各都道府県の保育士等キャリアアップ研修

日本地図

保育士等キャリアアップ研修は、各都道府県単位で開催されています。実際には各自治体が指定する実施機関で受講することになるでしょう。

各都道府県別キャリアアップ研修リンク集

各都道府県の保育士等キャリアアップ研修のリンク先を一覧にしました。開催日時や施設を参考に、希望に合う研修を探しましょう。

受講希望者が多い講座は、予約締切前に定員に達することがあります。所属する保育園と相談し、受講のスケジュールを決めましょう。

北海道 保育士等キャリアアップ研修

青森県 保育士等キャリアアップ研修

岩手県 保育士等キャリアアップ研修

宮城県 保育士等キャリアアップ研修

秋田県 保育士等キャリアアップ研修

山形県 保育士等キャリアアップ研修

福島県 保育士等キャリアアップ研修
※受講希望に関するページは現在非公開となっています。

茨城県 保育士等キャリアアップ研修

栃木県 保育士等キャリアアップ研修

群馬県 保育士等キャリアアップ研修

埼玉県 保育士等キャリアアップ研修

千葉県 保育士等キャリアアップ研修

東京都 保育士等キャリアアップ研修

神奈川県 保育士等キャリアアップ研修

新潟県 保育士等キャリアアップ研修

富山県 保育士等キャリアアップ研修

石川県 保育士等キャリアアップ研修

福井県 保育士等キャリアアップ研修

山梨県 保育士等キャリアアップ研修

長野県 保育士等キャリアアップ研修

岐阜県 保育士等キャリアアップ研修

静岡県 保育士等キャリアアップ研修

愛知県 保育士等キャリアアップ研修

三重県 保育士等キャリアアップ研修

滋賀県 保育士等キャリアアップ研修

京都府 保育士等キャリアアップ研修

大阪府 保育士等キャリアアップ研修

兵庫県 保育士等キャリアアップ研修

奈良県 保育士等キャリアアップ研修

和歌山県 保育士等キャリアアップ研修

鳥取県 保育士等キャリアアップ研修

島根県 保育士等キャリアアップ研修

岡山県 保育士等キャリアアップ研修

広島県 保育士等キャリアアップ研修

山口県 保育士等キャリアアップ研修

徳島県 保育士等キャリアアップ研修

香川県 保育士等キャリアアップ研修

愛媛県 保育士等キャリアアップ研修

高知県 保育士等キャリアアップ研修

福岡県 保育士等キャリアアップ研修

佐賀県 保育士等キャリアアップ研修

長崎県 保育士等キャリアアップ研修

熊本県 保育士等キャリアアップ研修

大分県 保育士等キャリアアップ研修

宮崎県 保育士等キャリアアップ研修

鹿児島県 保育士等キャリアアップ研修

沖縄県 保育士等キャリアアップ研修

キャリアアップ研修を活用し、保育士としてのステップアップを目指そう!

シャボン玉で遊ぶ女性と子供

保育士等キャリアアップ研修制度によって、今後は、真摯な勤務姿勢で業務に貢献する若手や中堅保育士への評価が、これまで以上に役職や給料に反映されるようになるでしょう。

保育士が、キャリアアップ研修によって知識やスキルを高め、やりがいを感じながら日々の保育に携わることは、子どもたちや保護者にとっても重要な意義があります。

さらに、将来、転職を考えている保育士にとっても、全国共通で効力をもつ研修修了証は有用です。保育士等キャリアアップ研修を利用し、ワンランク上の保育士を目指しましょう。


「わたしの保育」を運営するテンダーラビングケアサービスは、保育のお仕事専門の人材紹介会社として、多くの保育士さんのサポートを行なっています。

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監修者 PROFILE

コラム監修者 和氣 タイ子 Waki Taiko
都内の認可保育園にて園長経験7年、保育経験のべ30年以上のベテラン保育士。現在は研修など人材育成に注力。

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