保育士の残業の実態は?平均時間はどれくらい?残業を減らすためにできること
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#保育士の働き方
作成日 2019/11/29
更新日 2021/09/01
保育士の残業の実態は?平均時間はどれくらい?残業を減らすためにできること
元気に働き続けるためにも、プライベートとのバランスをとるためにも、気になるのが毎日の残業時間です。保育士は、子どもと過ごす時間や保護者対応、園行事の準備に事務作業……と、毎日たくさんの仕事をしています。
通常の勤務時間での業務だけでもかなりの体力も使い、さらに残業も加わると、やりがい以上に疲れを感じてしまう方も多いのではないでしょうか。なかなか改善されない保育士の残業について、法律面や実態から見てみましょう。
目次 |
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保育士の残業時間って?
サービス残業や持ち帰り残業が多いと言われ続け、なかなか改善されない保育士の就業環境。これらの残業は保育士として働くうえで、必ずと言っていいほどぶつかる壁かもしれません。
平均残業時間 公的な記録では1日12分
2017年に国が行なった『厚生労働省 賃金構造基本統計調査』によると、保育士の平均残業時間は1か月約4時間でした。1日に換算すると、約12分ということになります。
公的な統計では1日あたり約12分の残業が発生していますが、実際には記録以上の残業をしている保育士が多く、終わらなかった事務作業や保育の片付けなどをしています。
壁面を飾る製作物の作成や連絡ノートの記入、子どもの成長を記録する書類の作成など子どもと過ごす以外にも多くの仕事があり、積み重なると1日12分の残業では終えることは難しいのが現状です。
※参考:厚生労働省「賃金構造基本統計調査」
独立行政法人統計センター「賃金構造基本統計調査」
サービス残業って……みんなしているの?
子どもと毎日過ごす以上、アクシデントやトラブルはつきものです。怪我をした、熱を出した、などは日常茶飯事です。それらの対応をしているとほかの業務が後回しになり、するべきことが溜まってしまいます。
子どもの成長記録などはタイムリーに記入する必要があるうえ、個人情報が詰まった書類は持ち帰ることができず保育園内でしか記入できません。受け持っている子どもの人数が多いほど、時間を確保するのが難しくなります。
そしてそもそも、保育園では残業に関するルールが明確になっていないケースが多くあります。そのため、サービス残業をしていたとしても記録に残ることがなく、実際に残業したかどうかがわからないのです。
先日サービス残業をした分、今日は早く帰ります、といったことも言い出しにくいのが現状です。
持ち帰り残業って……みんなしているの?
子どもたちの午睡時間や、降園後に終わらなかった仕事は、やむをえず持ち帰ることがあります。
保育園では仕事を持ち帰るという選択は一般的に多くなされています。また、周りの先生たちがやっていたら自分も同じように……となってしまうのも仕方ないのかもしれません。
保育園で長時間の残業をしないために持ち帰って仕事をしていると、持ち帰り残業は日常化し、結果としてプライベートが削られることが日常茶飯事になってしまうようです。
過剰な残業もたらす影響
健康被害
毎日残業を繰り返すようになると、心身の健康に悪影響がもたらされます。
とくに子どもたちを一日中相手にする保育士には、肩こりや腰痛といった悩みもでてくるでしょう。身体を使ったら、その分だけの休養が必要となりますが、それが十分にとれない保育士さんも多いことでしょう。
また、身体だけでなく心への悪影響も深刻です。保育士は子どもを預かるという責任のある仕事ですので、その分の緊張感が常に付きまといます。残業が続けば、プライベートの時間も削られ、ストレスがたまります。心への負担は大きいでしょう。それが続けば、頭痛や生理痛、眩暈などが起こり、ひどくなれば心身症に発展する恐れもあります。
保育中の事故の恐れ
残業がつづくと、眠気や疲れがひどくなってしまいます。そんなコンディションの悪い状態で保育室に入るのは非常に危険です。子どもたちの些細な変化や危険な場面を見逃してしまう可能性があります。
また、睡眠が足りていないと判断力も低下するので、仕事が進まず、また残業が増えてしまうという悪循環に陥ってしまいます。早い時間に家に帰り、次の日のためにゆっくり休み、元気に出勤するというサイクルは保育士自身のためだけでなく、子どもたちの為にも大切なことです。
保育士の残業が多い理由
なぜ保育士の残業は多いのでしょうか。その理由として、仕事量の多さだけでなく保育園独特の運営や勤務形態も挙げられます。
理由1. 人手不足
保育士業界は、慢性的な人手不足が問題になっています。平成27年度に行なわれた『保育士確保プラン』で、就業継続支援や再就職支援、働く職場の環境改善などさまざまなプランが打ち出されていますが、現状改善には至っていません。
人手不足の原因には給与の低さや責任の重さなどが挙げられており、そのなかには残業量の多さも含まれます。また、正規雇用の職員は確保できているものの、補助教員や保育補助を確保できない園も多くあります。
そのため、保育補助に任せられるような仕事も正規職員が抱えるため、保育士一人当たりの仕事量や負担が多くなるのです。
理由2. 事務仕事が多い
保育士の仕事は、子どもたちと過ごす以外にも、連絡帳の記入や子どもの成長記録、日誌といった書き物の事務仕事が意外と多くあります。事務仕事をしている間は、子どもから目を離さなければなりません。
安全面を考えると子どもと過ごしている間は事務仕事ができないため、作業をするのは午睡中か降園後になってしまいます。午睡中や降園後も常に時間が取れるわけではないので、できなかった仕事は滞ってしまうのです。
理由3. 行事の準備が多く時間がかかる
子どもや保護者が楽しみにしている運動会や発表会などの大きな行事は、計画や準備、片付けとしなければならないことがたくさんあります。
残業抑止のために、1、2か月前から時間をかけて行事のための準備を行なう園もありますが、それでも直前になると残業になってしまうこともあるようです。残業抑止の取り組みを行なっていない園ではなおのことでしょう。
もっといいものにしようとしてつい時間をかけてしまい、結果として、行事の準備に日常の保育に……と追われることになります。
理由4. 保育時間外の会議・研修
保育園での会議や研修は、おもに子どものいない時間を使って行なわれます。しかし、保育園は朝早くから夜遅くまで、ずっと子どもがいる状態です。そのため、午睡中や降園後の時間を使って会議をせざるをえないのが現状です。
また、保育の知識やスキル向上のための研修も、多くの保育園で勤務時間内ではなく土日の休みに行なっています。このように、集中して仕事を片付けられる時間にも別の仕事が入ってくるため、残業を余儀なくされてしまうのです。
理由5. そもそも仕事量が多すぎる
保育士の仕事は子どもたちと関わることのみではなく、研修への参加、イベントの企画・運営・準備なども含まれます。保育士の一日の仕事量は多く、肉体的にも精神的にも負担が大きいのが現状です。
現役保育士からの職場への不満として「事務・雑務の軽減」という声も多く上がっています。そういったそもそもの仕事量の多さと保育士不足によるひとりあたりの仕事量の増加が残業に結びついているようです。
そもそも法律的な残業ルールって?
働くうえで大切な労働時間や残業のルールは、労働基準法によってきちんと定められています。あらためて確認してみましょう。
1日8時間のシフトを超えた時間は残業代が発生する?
保育園で残って仕事をしていた場合、残業代は発生するのでしょうか。労働基準法に基づき、1日8時間・週40時間の労働を超えた場合は残業代が発生します。
1日8時間のシフトを超えて働いていた場合は、超過したすべての時間が残業時間になり、残業代が発生するように法律では定められています。
※ここでの労働時間とは、保育園側から残業してでも行なうように促された業務、保育園側から命じられた業務、といったような保育園でしかできない業務を行なう時間を指します。
持ち帰り残業も残業代を請求できる?
今まで持ち帰っていた仕事も、残業代の請求をすることはできます。ただし、残業代を請求するためにはいくつかの条件を満たす必要があります。
担当業務を期日までに仕上げなければ不利益な扱いを受けてしまう、自宅に持ち帰らなければ期限までに終えることができない、持ち帰りを雇用主が把握している、といった内容です。
残業代の請求はこれらを満たしていることが必要です。
未払いの残業代はどうすればいい?
労働基準法では、未払いの残業代の請求期限は2年までと定められています。積もり積もった未払いの残業代がある、サービス残業や持ち帰り残業が慢性化している、という場合はまずは上司や園長に相談をしてみましょう。
相談をしても対応してもらえない場合は、労働基準監督署や弁護士に相談をしてみるのもひとつの手段です。
保育士の残業を減らすためには?
今までどおりの仕事のやり方でサービス残業や持ち帰り残業が多いのであれば、仕事のやり方を工夫する必要があります。
ICTツールを使って作業を効率化
書類作成や登降園の管理などは、ICTツールを導入することで一元管理し、効率化を図ることができます。
ほかの保育園での取り組みを聞いたり、ICTツールの導入促進をしている企業にやり方を教わったりするとよいでしょう。
子どもの様子をシェアしたり、保護者へのお便りをネットワーク上で行なうことで印刷の手間を省いたりと、先生方の負担を軽減することも可能となります。
園によっては、ICTツールの活用よりも手書きが良しとされている風潮が強い部分もまだあります。園全体で、どのような取り組みをすれば残業を減らせるかを考えることが大切です。
保育士同士協力して分担する
新任の保育士は、まだ仕事の要領がつかめず慣れていません。そのためほかの人よりも時間がかかったり、効率よく処理できなかったりします。また、雑用の多くは新任の保育士の仕事とされることが多いものです。
仕事のやり方を率先して共有するだけでなく、皆でうまく分担して全体で仕事を早く終わらせるような風土づくりをしましょう。
二人で担任しているのであれば、子どもの人数が少ない時間に一人が事務作業をしてもう一人が子どもを見る、といった工夫ができます。
仕事を分担し、勤務時間内に終えられるように皆が意識することで、時間の使い方を工夫し、効率化を図る意識を身につけられます。
年間の予定を確認し作業を効率化する
運動会や発表会などの大きな行事の時期は、年度の最初の段階でほとんど決まっています。
そのため、ある程度忙しくなる時期はあらかじめ把握できます。年間の予定を確認しておき、行事前に仕事が集中しないように少しずつ進めていく工夫をしましょう。
たとえば9月に運動会を行なう場合、種目決めや練習などを考えると7月から忙しくなります。
7、8月生まれの子どもへのメッセージやプレゼント作成、大まかな月案や日案の作成、保育で使用する製作物の準備などは早めに取りかかっておき、余裕を持って行事の準備を迎えられるとよいでしょう。
残業なしの保育園に転職するには?
働き方の工夫をしてもサービス残業が多い、残業によってプライベートに支障が生じる、という場合は、転職を視野に入れるのもひとつの手段です。
残業なしの保育園の見極め方
働き続ける上でどうしても残業を避けたいという場合は、働く場所を変えるという方法があります。
求人票やホームページの情報から判断するのは難しいです。見学などを通じて、情報収集をすることが必要でしょう。
そういったリアルな情報はなかなかネット上には出てこないので、実績のある保育専門の人材紹介会社に相談するのも一つの手です。
保育のプロとしての残業は必要?
保育士の資格を取得して保育のプロとして働くうえでは、雇用契約のもと組織の一員として働くことになるため、残業が必要になるパターンもあります。
正社員としての覚悟
正社員として雇用される際、残業がないように調整されたとしても、保育園自体が残業の多い体質であるなど、特有の風土ができ上がっている場合もあります。
契約上の権利、と自分だけ残業をせずに定時に帰ることは、同じ正社員の先生から見ればあまり印象はよくありません。そのような働き方を続けていると、いずれ自分自身も働きづらくなってしまいます。
どうしても残業ができない場合は、正規雇用から派遣や契約社員、パートへ転身するという方法もあります。特に派遣社員の場合には、保育園と就業者との間に派遣会社が仲立ちをすることにより、残業が全くない、もしくは少ない傾向にあります。
保護者との信頼関係を深める
保育士として子どもたちと関わる以上、プロとしての働き方が求められます。目の前の子どもたちに何ができるか、どう関わっていくことが最善か、といった行動を突き詰めていく結果が残業になることもあります。
たとえば、保育時間内に子どもが怪我をした場合、状況を詳細に保護者に伝えるためには、遅番の先生に伝言を引き継ぐ、自分で伝える、といった方法があります。
伝言を引き継ぐことは簡単です。しかし状況を詳細に伝えるための真摯な対応、保護者との信頼関係の構築、といった視点で考えたときに、保護者に自分で伝えたほうがよりよい結果となります。
この結果を得るための残業が、プロとしての意識や保育士としての信頼を得ることにも繋がるでしょう。
実態を理解して残業の判断を
保育士の残業は状況によってさまざまで、必要な残業とそうでない残業とがあります。
保育のプロとして必要な残業は成長の機会として捉え、信頼関係の構築や保育スキル向上に繋げていくことが大切です。そうでない残業は、仕事のやり方や時間の使い方を見直して、少しでも減らせるようにしましょう。
また、転職を検討する場合には、プロからの客観的なアドバイスが役立ちます。今の働き方に疑問を感じる場合には、ぜひ以下のリンクから当社にご相談ください。
「わたしの保育」を運営するテンダーラビングケアサービスは、保育の分野で人材紹介サービスを20年以上続けており、転職エージェントとして保育士の皆様のご就業をサポートしています。
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監修者 PROFILE
佐藤 大悟 Sato Daigo2006年3月にテンダーラビングケアサービスに入社し、主に保育の人材サービスに従事。
保育に従事される方々へのサポートを重ね、面談すること数百人。訪問した保育園数は500園を超える。認可保育園の立ち上げにも関わるなど、経験は多岐に渡る。現在は人材事業を束ねる立場となり、登録人材10,000名へのサポートを続けながら、部下の育成に従事している。